第58回 桜花賞 1998年
1998年の桜花賞で単勝1番人気に支持されたのはダンツシリウス。前年1997年の阪神3歳牝馬ステークスで3着に入り、年が変わってからは牡馬相手のシンザン記念、そして前走のチューリップ賞を連勝している。2番人気はエイダイクイン。クイーンカップを制しての参戦となった。
そして3番人気に支持されたのがファレノプシスだった。新馬戦、500万特別、エルフィンSと3連勝した注目馬だったが、前走のチューリップ賞では4着。スタートから流れに乗ることが出来ず、後方からのレースを強いられたが故の敗戦だった。当時の鞍上、石山繁に批判が集中した。結局、鞍上交替を余儀なくされたが、代わりに手綱を取ったのは何と武豊。石山が気の毒に思えてくるほどの騎手が待ち構えていたのである。
レースはロンドンブリッジがハナを切る形でスタート。マックスキャンドゥ、ロッチラヴウイングなどとともに、ダンツシリウス、エイダイクインも直後を追走する。ファレノプシスは6番手。前走と違って、しっかりとレースの流れに乗る形で前を追っている。やはり鞍上の違いなのか?
逃げたロンドンブリッジはなかなか図太かった。直線に入っても2番手以降の馬がなかなか並びかけることが出来ず、反対にその差がどんどん広がっていく。逃げ切りか?そう思われた瞬間、外から伸びてくる馬がいた。6番手で流れに乗りつつも脚を貯めていたファレノプシスだった。ゴール手前でロンドンブリッジを捕まえると一気に抜き去り、1馬身1/4差をつけて先頭でゴール板を駆け抜けた。逃げ粘ったロンドンブリッジは2着。そのロンドンブリッジをスタートからマークして行ったエイダイクインは6着、ダンツシリウスは11着にそれぞれ敗れた。
このファレノプシスの桜花賞制覇でデビューから3連勝を挙げた際に受けたこの馬の高い評価は間違いではなかったことが証明された。しかし同時に、前走と今回とで鞍上の力の差を見せ付けられる結果にもなった。レースの流れに乗りながらも、直線で差し切る脚をしっかり貯めておく。この日の武豊の乗り方はひとつのミスもない完璧なものだった。騎手の世界の厳しさがよく現れていた桜花賞となった。